髭達磨なるままに

思い出したかのように書きます

【定価10万の本】わが実証人生 大塚正士著 第二話「実証人生とは(その二)」

まえおき

まだ二話までしか読んでいないが、大塚氏は学者でも文学者でもなく、日頃の色々な経験や観察から自分の考えを確立している面白いおっちゃんなんだ、というスタンスで読むことができそうだ。

なので、一話ごとにある一つのテーマや伝えたいことを一貫しているわけでもないし、読了後にある分野の専門家になれるような著書ではない(だろう)、と前置きしておきたい。

 

内容まとめ

「種」と「欲」についての考えが述べられていた。

最初の例え話は日当たりの良い所と悪い所にそれぞれ生えている植物に関するもの。

家の日表日裏にそれぞれ畑があり、同じ作物(サツマイモや大麦)を植えたら

日当たりの良い所では成長が早く、早く芋や穂をつける。

反対に悪いところでは背が高くなる一方で、なかなか芋や穂をつけない。

このことから日当たりによる成長と死を感じたという。日に当たりすぎると死が早まり、すぐ「種の保存」をし始めるという考えだ。つまり太陽=死を早めると氏は考えていて、人間も同様だとする。

太陽に当たったほうが健康的という現代のメインストリームは、明治維新以降欧米諸国の考えが入ってきてからのものであり、それは何故なら欧米というのはサハリンど同じ程度の緯度だからだ、という。

それだけ日照時間が短ければ太陽に当たったほうが健康となる。だから東北以北の地域では日照時間が短いから太陽に当たったほうが健康だが、それより南は寧ろ太陽に当たると死が早まると考えているらしい。

 

このあたりの文章からは、陰陽が表裏一体であるといった感覚を得た。

成長が早く実をつけやすい植物は死に向かうスピードも早い。逆も然り。またより多くの人間の寿命を延ばすために、より実をつけやすい植物がそのような環境で育てられているということは、総体としての人間の寿命は伸び、総体としてのさつまいもの寿命は縮んでいる。

 

本文は種の保存というテーマから、動物の欲へと移っていく。この話題の転換点で、この話中唯一「実証」という語が使われている。

神のご意志に副うてか副わずにか、繁栄を続けていることは私のいう「実証」ですね。髪のご意志の『種の保存』ですよね。

「人間や動物は繁栄や生存の為に性交渉や食事をしているのではない」という主張が続く。前文との関係性は氏の思考回路を読み解くのに重要だと感じている。実証以外は主張や意見、仮説で構わない、という意志が読み取れる(ように感じる)。

まとめに戻すと、夫婦やカップルは子供を作るために性交渉をする、というよりも性交渉が楽しくて結果として子供ができる、と考えているという。更に赤ちゃんが母乳を飲むのも「生きよう生きよう」として考えているわけもなく、「こんなに美味しいものは世に二つとない」と感じているからにほかならない。

楽しい、気持ちいい、という感覚や知覚は人間の繁栄・生存のために神が与えたものだと結論づけている。

 

読後の気持ち

正直、他にもここで書いたら通報されるような例え話が、具体的な単語を交えてたくさんあった。まえおきに書いた面白いおっちゃんという表現は、このあたりの二軒目居酒屋トーク感からだ。

そもそも大塚氏自身の取引先や経営層向けに書かれ売られたこの本はある意味では氏の厚意だと思っているので、読みやすく惹きつける文体や単語はサービス精神だと感じる。

その中にも、伝えたいことをしっかりキャッチしてくれよ、という睨みが何処となく散りばめられ、充実感がある読書になりそうだ。